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2015年09月17日

アンナ・カヴァン「氷」感想文

とりとめがなくて、こっち側から面白さをすくいあげなければ、全部指の間からこぼれおちそうなところが、ブンガクっぽい。

半分以上指の間からだーっと落ちていったのだけれど、ゆえに残ったものが有り難く感じられる。

俺フィルターにひっかかったものだけが残ったわけで、うまみ成分の純度が高い。

翻訳調のすこしぎこちない文章が好きというのもある。舶来物をありがたがる気持ち。アメ車は手がかかるのがいいんだよ。



アンナ・カヴァン「氷」



世界が氷に閉ざされつつある終末の世界が舞台。

目鼻立ちのついている登場人物は3人だけ。「私」と「少女」と「長官」

一人称「私」が主人公。主人公らしくよく悩む。心が実に揺れる揺れる。しかしカーチェイスもするし、殴り合いには大概勝つ。

そこそこハードボイルド的タフガイでもある。村上春樹的一人称「僕」からスカした感じを抜いてもっとダメ人間にした感じ。

ヒロインである「少女」の被虐性に性的興奮を感じるが、それを恥じたりもする。実際痛めつけて性的興奮を得ていた過去もあったようなことは暗示されているが、本編中はそこまでのことはしない。

「離して!」という少女の腕を強く掴んで「黙れ」と言って、大人しくさせるぐらい。

ベッド脇でそういうこともしているので、あれ?この後は・・と、やっちゃってる可能性も感じられるには感じられるが。

で、その「少女」がヒロイン。やせぎすのアルピノ。銀髪。氷に閉ざされる世界を表象しているんだか何なんだか。

日本発世界系のアニメのような感じだけれども、こっちの話が先なんだから仕方がない。

少女と表記されているが、20才オーバーの設定で離婚暦もあり。

彼女自身が言葉で内面を語ることはほとんどなく、「私」の行動に対しての拒絶の反応か、恭順の反応しか描かれない。よって、滅び行く世界を背負っているやりすぎな悲劇性が清潔なラインにとどまっている。これが巨乳で自分の内面を語りだすと、エロゲーになると思われる。

この「氷」の話の構造は基本的に以下のものだ。

かつて「私」の傍にいて今はそこにいない「少女」を、「私」が追い掛け回す。

ほぼこれだけ。

となると、じゃあ「少女」は今どこにいるのかというと「長官」の傍にいる。

最初、「長官」は「私」の前に紋切り型の敵役として現れる。イケメン長身でスポーティで権力も持っている。少しうすっぺらい。

それが話が進むにつれて、うすっぺらくなくなる。しかし特に何か雨の中で子犬を拾った的エピソードが描かれたわけでもない。

ただ、「私」の方が「長官」に対して、「こいつめー」という態度をとるだけではなく、様々な態度をとりだして、その態度が「長官」のイケメン長身の顔に映る。

「私」は「長官」に媚を見せる。「私」は「長官」にシンパシーを感じる。「長官」は「私」だと言い出す。実際、「長官」の「少女」への対し方は、「私」の「少女」への対し方とまったくの同じであり、「少女」から受ける反応も同じ。拒絶か恭順だ。ただ、長官の方が絶大な力があるので、拒絶の力はより弱弱しくなり恭順の姿に絶望の色が濃い。



こんな話が、ただただ300ページぐらいあってからの、最後の方で「私」は「長官」から「少女」を取り戻す。

二人は同じ場所で時間を過ごし始めるが「少女」は一向につれない。ツンのみ。デレ全くなし。

「私」は「少女」をやっと取り戻したわけであるが、やっぱこれいらないと思い、彼女にさよならを告げて(おいおい)、もう一方のこの話の事件性である世界の終わり(その現象「氷」は少女の佇まいとリンクしているのだが)と対峙するために「長官」の下にに赴く。

「長官」はそんな「私」を、最初、私と君は魂の双子なのだよ的に歓待し共に世界の終末を憂うことに同意するが、この会談の帰結は、やっぱり対立に終わる。

「長官」は「私」を軽蔑し、叱責する。

何で「少女」を残してきたんだ。

そして宣言する。

「少女」を私は取り戻す。

「私」は「長官」の配下の憲兵たちに袋叩きにされるが、かろうじて逃れる。そして、全てのツッコミを無視して、もう一度「少女」に会わねばと思う。「長官」の手に落ちるより早く! 

読者ボス村松はこの時、いやもう、なんでやねん!ですよ。さっき少女を捨ててきたときと状況は一点を除いて何も変わっとらんがな、と。「長官」が「少女」に価値を認めた一点を除いて。

人が欲しいと言ったので、自分もやっぱり惜しくなった「私」は大立ち回りの末、装甲車を奪い、「少女」の元に戻る。

もちろん「少女」からは拒絶を受けるが、なんやかんや揉みあい口論しているうちに彼女から、

「窓の外を見ていたのは、あんたを待っていたの。なぜだか分からないけどあんたを待っていたの」(うろ覚え)

の言葉を引き出し、大感激。彼女を装甲車に乗せて、意味なしと分かっているが、もっと南へと赤道直下を目指す。

後ろには「氷」が迫っている。もちろん逃れることはできない。

ただ、今、この装甲車の中は温かい。傍らには「少女」がいる。

ポケットに入った拳銃の重みが頼もしい。(自殺を仄めかす。すこし陳腐か)

こう、俺は読みました。

ちなみに「長官」の最後の出番は「取り戻す」と宣言したところで、もう出てこない。ラスバトルなし。「いいよ、それは」の著者の声が聞こえてくる。このうっちゃり感が、全編にあふれ、作品を魅力的にしている。
posted by ボス村松 at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 文化祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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