長塚京三が、イギリスで観劇して感心した芝居を、自分で翻訳し舞台に上げた意欲作。そんなインテリ?長塚京三!?ソルボンヌ大学で演劇を学んだらしい。パリーですよ。パリー。 ・・老人のもとに古い友人が訪ねてくる。40年ぶりの再会だった。老人はこの再会にあたりピストルを客間の戸棚に忍ばせる。はたして40年前、二人の間にイカナル事件があったのだろうか。長塚京三が老人、益岡徹がその友人役。
上手いということでは、まず、益岡徹が激しくウマイ。その立ち姿のなんと見事なことよ。すっくと立って一点の曇りもない。その周囲にはやや硬質でありながらも快達な空気が漂う。とにかく存在がクリア。台詞回しひとつとっても気が利いている。そして自在。息継ぎ一つで驚き愉快逡巡何でも表現してみせましょう。あざっす、いいものを見せていただきました
対して長塚京三はもうちょっと素直に、悪く言えば素人くさい雰囲気すら漂わせて舞台に立つ。台詞回しも棒読み感をのこし仕種もどこか不器用。でもそれが長塚京三クオリティ。演劇の神様にそういうのもいいんじゃないのと祝福を受けているので大丈夫。加えてこの芝居、長塚京三が全編喋りっぱなしで、二幕なんて長塚京三しか喋らない。彼の言葉は私の感情を不穏当に揺り動かそうとせず丁寧に言葉を、二幕90分間にわたり積み重ねていく。その仕事に私の胸の内の水面は一種ブンガク的な感興に波打つのだった。文化だな〜。
自分の作ろうとしてる芝居が少々せせこましく感じました。ここで笑いをとって、とか、ここは泣かせたいところだから、とか。俺も芸術やろうかな。僕はあの人に、勝ちたい。星五つ。
七月の私の公演もよろしく。劇団鋼鉄村松公演、ロック一番星